日出づる国の片隅で。

本の話から日常の話まで

幻の東京オリンピックか

更新が遅れてしまったが いま話題は2020年の東京オリンピックだろう。 テレビや新聞は東京開催決定に沸き返り盛り上がっている。 ここで東京オリンピック開催反対を叫ぼうものなら非国民扱いだ。

IOC総会のプレゼンテーションで福島原発について安倍総理は言った。 状況はコントロール下にあり、汚染水は港湾内で完全にブロックされている、と。 しかし、ちょっと待てよ。 汚染水は今も漏れ続けており、 原発内は立ち入りことができずに正確な現状は何もわかってないのではないか。 港湾内で完全にブロックなどと言えば コンクリートかなにか強靭な構造物が築かれているかのようだが 現実には水中カーテンで仕切られているだけで 港湾内とその外の海は海水と汚染水が行き来しているのは東電も認めたのではなかったか?

これで経済波及効果は3兆円などとも言われているが、 オリンピックを御旗に消費税増税は強行され、 公共工事の名の下に多額の税金がばらまきされるのは日の目を見るより明らかだ。 まさに土建屋国家ニッポン健在、である。

福島原発事故処理が遅々として進まないのは そうした現場で働く人材確保が困難なことも一因である。 そこへ五輪会場施設や道路、交通施設などの建設ラッシュが続けば 福島復興工事の労働者不足はますます深刻になるだろう。

竹田恒和JOC会長は言った。 東京は福島から250キロも離れているから安全だ、と。 まさに福島の切り捨てだ、と僕は感じた。 東京オリンピックによって我が国は東京一極集中がさらに加速され 地方の過疎化は来たる超高齢化社会に末期的な状況を生むはずだ。

オリンピック開催都市が東京に決定したのはこれで3度目である。 今回の2020年開催地、安倍首相の祖父岸信介が首相であった時の前回1964年開催地、 そして初めて欧米以外での開催が決まった1940年開催地だ。 そのはじめて東京オリンピック開催が決まった1940年は 日中戦争の本格化により日本政府自らが開催権を返上して、東京オリンピックは幻となった。 2020年まであと7年。 その間、毎日毎時毎分毎秒、一刻も休むことなく福島第一原発から放射能汚染物質が漏れ続け それを防御する完全な方策を何ら持ち得ていないこの国で スポーツの祭典を開催することは果たして是と呼べるのだろうか? 日本政府自らがまたも開催権返上となるばかりか 世界中の世論を受けての開催権剥奪となる可能性すらあり得ないことではない、と僕は思う。

福島では未だ自宅に帰れず仮設住宅暮らしを余儀なくされている人々がいる。 そんな人たちが、多額の税金を使って改築された立派な国立競技場をみて何を思うだろうか。 東京オリンピック開催決定万歳一色のマスコミ報道に踊らされる前に もう一度、視野を広げていま起きていることを直視してみたいと思う。