日出づる国の片隅で。

本の話から日常の話まで

悪党の金言

月刊「PLAYBOY日本版」に掲載されたインタビューの中から著者自らが厳選した8人のインタビュー記事が掲載されている。

そのインタビュー相手の人選が凄い。僕にとって関心のある人達ばかりだ。

インタビューの中にもなかなか興味深い発言が多くあった。

例えば、作家の保坂正康は天皇問題について触れ「天皇は必ず先帝を否定する」と述べる。確かに昭和天皇明治天皇を何度も語ったけれど大正天皇には言及しない。今上天皇についても同じことが言えるのではないか、と。

オウム事件を取り上げた「A」や「放送禁止歌」などの著作を持つ森達也氏はドキュメンタリーとしてのテレビメディアの限界を語り、

親しかった大学の先輩・中沢新一を痛烈に批判する島田裕己氏は現在を善悪二元論の社会であり黒白間のグレーゾーンの幅が狭くなっていることの弊害を説く。

僕とほぼ同世代の作家である重松清氏は少子化の問題は各家の墓をどうするかの問題であると述べる。

インタビュー相手はいずれも各界の第一線で活躍する人物であるにもかかわらず、著者は父や母、妻、子供など家族についての質問も常に発している。育った環境や取り巻く家族から受ける影響は決して少なくないことがよく理解できる。

お薦めの一冊。

<「悪党の金言」足立倫行著 集英社新書