日出づる国の片隅で。

本の話から日常の話まで

ヒトラーの経済政策?世界恐慌からの奇跡的な復興

アドルフ・ヒトラー第二次世界大戦を引き起こした張本人でありユダヤ人虐殺など残虐な行為を行ったナチス・ドイツの最高責任者である。いまや悪の代名詞となっているのがグローバルスタンダードな捉え方であるが、けれど彼らの行った行為すべてが否定されていいということでもないだろう。ヒトラー=悪のように何かを全否定する風潮は、逆に何かを全肯定するのと同じくらいに危険な考えではないのか、と。そう感じていた中で出会ったこの本は、ヒトラーナチスの残虐行為について擁護したり肯定したりするものでもないが、今の閉塞する経済状況を救済するヒントになることを取り上げている。タイトルからして賛否両論を呼びそうな一冊だ。

誤解されがちであるがヒトラーは武力クーデターなどで政権を奪ったのではない。きちんと法律と選挙に基づき合法的に政権の座についたのだ。かの「わが闘争」は政権に就く以前に出版され大ベストセラーとなっていた。つまり圧倒的なドイツ国民に支持されていたのである。また、ナチスといえば極右政党のように思われがちだが、正式名称「国家社会主義ドイツ労働者党」の名が示すようにどちらかと言えば左寄りの政党なのであった。

第一次世界大戦に敗れ莫大な賠償金を課されたドイツでは、天文学的なスーパーハイパーインフレに襲われ、ようやく復興しかけた矢先に世界恐慌ヒトラーが政権を握ったのは、まさにそんなボロボロの状態の時だったのである。政権の座についたヒトラーは次々と新たな経済政策を行い、2年後には先進国のどこよりも早く失業問題を解消していたのである。

大企業に増税し労働者に大減税した税制改革、中小企業への貸し渋り対策、国会議員や高級官僚、ナチス党員が私企業の役員になることの禁止(いわば天下りの禁止だ)など、いまの閉塞する日本の経済状況の中で参考にすべきものも少なくないのではないか。

<「ヒトラーの経済政策?世界恐慌からの奇跡的な復興」武田知弘著 祥伝社新書>