日出づる国の片隅で。

本の話から日常の話まで

もうひとつの「江夏の21球」

今は亡きノンフィクション作家・山際淳司の代表作であまりに有名な「江夏の21球」。昔、読んで感動したあの作品は、1979年の日本シリーズ近鉄対広島の3勝3敗で迎えた第7戦9回裏、近鉄の攻撃時にリリーフエース江夏豊が投じた21球と、それを取り巻く試合の流れと微妙な選手心理を描いた名作であった。が、劇的なクライマックスが用意されていたあのイニングに至るまでにあったドラマの伏線を、近鉄サイドからの視点で描いたのがこの作品だ。公式戦連続試合出場を続けていた衣笠祥雄がこの日本シリーズ第5戦には出場していなかったことや、第7戦の江夏豊は9回だけではなく7回の途中からマウンドに上がっていたこともおぼえてなかった。それよりなにより日本シリーズ、当時はナイトゲームではなくすべてデーゲームで行われてたよなあ。やっぱりあの頃のほうがよかったと思う。

<「もうひとつの『江夏の21球』 佐野正幸著 主婦の友社